ビートルズを聴いた

この前、ビートルズを聴いた。人生初である。今まではビートルズを聴いたことがなかったのだ。いや、「聴いたことがない」とまで言い切ると語弊があるので、正確に言うと「ほとんど」聴いたことがなかった。

私は屈折して、ひねくれている。それも相当にだ。一方で、大衆から外れたくないという思いもある。だからいつも、メジャーなジャンルのマイナー枠か、マイナーなジャンルのメジャー枠を好きになる。音楽ジャンルは当然のごとくハードロック→ヘヴィーメタルプログレソウルミュージック、ジャズ、……と進んだし、漫画、アニメ、本にしたってそうだ。仕事だってそうかもしれない。

そんな人間がビートルズを聴く気になるだろうか。まあ、ならないだろう。実際、冒頭でも述べたとおりに、長い間触れないようにしていた。あえて避けていた場面すらある。

でも、ある日ふと仕事中のBGMとして聴いてみたのだ。すると案外良かった。良過ぎたとも言える。Rubber Soulなど、レコード時代なら擦り切れるまで聴いていたかもしれない。そして自分の好きなミュージシャンたちにもビートルズの影響を感じられるようになった。今まで自分はなんともったいないことをしてきたのかとすら、考えてしまった。

そして思った。「メジャーなものに触れ、長いものに巻かれる人生も悪くない」。大衆に支持されているコンテンツに触れること、それは、自分と大衆との違いを見つめ直すきっかけになるし、同時に自分が手を出してこなかったジャンルに触れることになる。学びしかないだろう。ただ、その道に身を任せきりにしたくないとも、同時に思うのだ。自分と大衆はしょせん同じで、今までの自分がやってきたことは単なる遠回りに過ぎないと自分で認めてしまうのが少し恐ろしい気分にもなるからである。

売れるものに触れるおもしろさと、自分の矮小さ。どちらを受け入れればよいのだろうか(もちろん理想的には両方できればよいのだが、そううまくもいくまい)。今の私には、答えを出せそうにない。